不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
第10節:プリン再び
私の家の台所には、木で出来たどこの家庭でもよく見られる長方形のテーブルがある。
毎朝、朝食は、このテーブルで食べている。
私が、小さい頃からあるテーブルで、小さい頃の私が書いた落書きも薄っすらと跡だけになって残っている思い出深いものだ。
久しぶりにこの家に戻ってきて、このテーブルが、まだ使われていたのが、わかった時、私は、懐かしさを感じたものだった。
そして、今、私と同様の感想を持った人物が、イスに座った状態でテーブルについていた。
「うわぁ!懐かしいな、このテーブル。昔、よく、ルミちゃんとこのテーブルに座って、お絵かきしたもんな~。」
コウは、先ほどまでの落ち込んだ様子を忘れたかのように、はしゃいでいた。
「それにしても、コウちゃん、いい男になって・・・。あっ、そうだ。プリンがあるんだけど、食べる?」
母親が、懐かしそうな目でコウを見ていた。
私の家には、女の私だけで、男の子がいないから、母親は、コウをまるで自分の息子のようにかわいがっていた。
それだけに、久しぶりにコウに会えてうれしいのだろう。
「はい、いただきます。」
コウは、信じられないほど、丁寧に答えた。
「どうぞ。」
母親が、冷蔵庫からプリンを取り出して、コウの前に置いた。
「いただきます。」
コウは、すぐに食べ始めた。