不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
「しょうがないでしょ、お父さんの転勤ってやつなんだから。」
私も必死に涙を抑えながら答えた。
コウと同じ6歳の私にとって住み慣れた街を離れるのがさびしくないわけがない。
「・・・でも、ルミちゃん、僕とずっと一緒にいて守ってくれるって約束したよ・・・」
ついにコウは泣き出した。
「・・・もう・・・しょうがないでしょ。・・・コウは男の子なんだから・・・強くならなきゃ・・・」
私もコウが泣くのを見て、ついに我慢できなくなって泣き出してしまった。
2人の泣き声が辺りに響く。
その私達の鳴き声を聞いて、私とコウの母親が駆けつけてきた。
「どうしたの、2人とも?」
母親達は私達を慰め、そして私を車の後部座席へと乗せる。
コウは、母親に抱きついたまま、私の方を見ようとはしなかった。
そして、私を乗せた車は、住み慣れた街を離れ、新たな街へと引っ越していった。