天空のエトランゼ〜赤の王編〜
ガンスロンの襲撃から、数日が過ぎた。

学園は表面上は、平和を取り戻していた。


いつものごとく、颯爽と廊下を歩く九鬼。

その姿は、いつでも生徒の目を引いた。

ただ廊下を歩く姿にも無駄がなく、ただ美しいかった。

感嘆して、九鬼を見送る生徒達は、その動きが気品からくるものと思っていたが、本当は違った。

殺気こそ放っていないが、九鬼の動きはすべて…襲われても、即座に対応できるように、気を張りつめていたのだ。

気品には程遠いが、もし獲物を襲う寸前のライオンの姿が、美しいというならば、九鬼から受ける印象は気高さだった。


休み時間、つねに廊下を歩いていたのは、みんなの目を引く為ではなく、詮索していたのだ。

敵を。


(闇の気配は…ない)

ここ数日....九鬼はおかしな気配を感じていた。

くまなく校内を探索していたが、闇の気配を感じたことはない。

(しかし…心がざわめく)

九鬼は、闇の女神と一体化したことで、昔よりも敏感になっていた。

(どこだ?)

屋上に上り、学園中を探る。

(間違いないはずだ)

真上に太陽があるのに、闇を感じる。

(どこにいる?)

九鬼は隣の校舎の屋上に、金網を越え飛び移った。

昼間の太陽が、九鬼の肌を刺激した。

(太陽が痛い!?)

明らかに、九鬼の体は変化していた。

(完全に同化はしなかったはずだが..)

九鬼は着地すると、目を細目ながら空を見上げた。

そこにいる太陽と、自分自身を確認する為に。

(太陽がいる限り…闇は、見えない)

九鬼はフッと笑うと、屋上を歩き出した。

拳を握り締めて。

今更...何を気にするか。

(あたしは...闇夜の刃だ)
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