天空のエトランゼ〜赤の王編〜
(確かに…血の匂いがした)

九鬼には、確信があった。

しかし、血があった痕跡もない。

気になって、再び廊下に戻ってきた九鬼はもう一度調べてみることにした。

今度は、別の角度でだ。

「フン!」

周囲に誰もいないことを確認すると、九鬼は黒の眼鏡ケースを突きだした。

「装着!」

眼鏡ケースこと乙女ケースが開くと、黒い光が九鬼の全身を包み…黒い戦闘服を身に纏った姿に変えた。


乙女ブラックとなった九鬼は、眼鏡の付け根を触った。

レンズの表面が変わり、闇の痕跡を探す。

廊下中をくまなく探していると、レンズの表面に矢印が表示され、微量な血の痕跡を発見した。

「これは?」

痕跡に向けて手を伸ばした九鬼。

「窓ガラス?」

血の反応は、ガラスの表面から出ていた。

「血が飛んだのか?」

考えを巡らそうとした時、九鬼の耳が空気を切り裂く音をとらえた。

「チッ」

舌打ちすると、九鬼は首を右に傾けた。

九鬼の耳許を通りすぎたものは、痕跡の残っていたガラスに突き刺さり、割った。

「包丁!?」

九鬼ははっとした。

振り返ると、廊下の向こうに、人が立っていた。

「乙女…トドメ色!?いや、乙女…」

九鬼は唇を噛み締めた。

「パープル!」

廊下の端から、九鬼には向かって走っているのは、乙女ソルジャーだった。

紫に近い色をした乙女ソルジャー。

「馬鹿な!あり得ない!乙女パープルは、バグから生まれた偶然の戦士!この世界にいるはずがない!」

乙女パープルの両手には、二本の鎌が握られていた。

「九鬼真弓!」

乙女パープルは叫んだ。

「あたしは、お前と言う存在がいる限り!存在する!どの世界でもな!」

二本の鎌が、振り下ろされた。

「その声は!」

九鬼は鎌をよけた。

「まさか!?」

避けられた二本の鎌を合体させると、巨大なハサミに変わった。

下から突き上げるように、パープルは九鬼に向けて、ハサミを放った。
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