姪は叔父さんに恋してる


―――


雑踏に紛れ、互いの待ち人を呼ぶ声が聞こえる。
見る限り、もう5組のカップルが合流し、去って行っただろうか。


時間は午前9時25分。
何度時計を確認しても、約束時間には程遠かった。

何のために1時間も早く家を出たかと言うと、理由は前と同じ。
叔父さんを待たせたくない。
これだ。

「…はぁ……。」

本当なら時間に余裕があるのを見越して、何か暇潰しでも用意すればいいんだけど、その間に叔父さんが来たら困る。
暇潰しのせいで現れた叔父さんに気付かないなんて論外だ。

だからゲームも本も、特に何も持って来なかったわけだけど…、しかし暇だ。

さっきからずっとしていた人間観察にも厭きたし。
叔父さん観察なら厭きないんだけどな。


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