いちばんの星

ふたりきりの時間


――――――


「おいッ!」

「…」

「おいッ!聞いてるのかッ!」



ヴェルヌの言葉にミュリエルははっと我に返った。



「すッ、すみませんッ!」



最近ずっと食糧庫で眠っているミュリエルは寒さであまり寝れず睡眠不足が続いていた。



それだけではなく、日中仕事をしている時もエミリア達からチクリチクリと嫌がらせを受けていた。



初めは聞こえるように陰口を言われる程度だったが、次第にエスカレートしていき箒をぶつけられたり手を踏まれたりといった暴力を受けるようになっていた。



エミリアは若い使用人の中ではリーダー的存在なので、気づいた人間も見てみぬふりをしている。



もちろんラナも気づいてはいたが、もともと内気な性格のためなかなか言い出す事ができなかった。



「ったく…俺と一緒にいてボーっとするなんてお前が初めてだ」



相変わらずヴェルヌは憎まれ口をたたくが、昔のように言葉に冷たさが感じられなくなった。



そして何より変わったのはミュリエルに笑顔を見せてくれるようになった事だ。



そんなヴェルヌの笑顔を見るとミュリエルは胸が高鳴った。



あまりのエミリアの嫌がらせにラナがヴェルヌの元へ行くのを断ったらどうだと提案したがミュリエルはそれを断った。



ミュリエルもヴェルヌに会うのを楽しみにしているからだ。




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