いちばんの星
やっと愛しい人の腕に抱かれることができたのに……
震える身体が、ミュリエルに過去を思い出させる。
しかし、そんなミュリエルに、ヴェルヌは何も聞かなかった。
何も言わず、ただ抱きしめてくれた。
そんなヴェルヌの行動が嬉しかったのか、未だ過去を断ち切れない自分を情けなく感じたのか、ミュリエルの目からはぽろぽろと涙が零れ落ちる。
――その時。
「俺は、お前がこうしてここにいるだけで十分だ」
そう言うと、ヴェルヌはミュリエルの頬を伝う涙を優しく拭いた。
そんなヴェルヌにミュリエルも寄り添うように体を近づけ静かに目を閉じた。
あなただから――あなただからこんな気持ちになるの……
そのまま、ミュリエルの意識は夢の中へと沈んでいった。
(俺が手を出せないなんてな…)
ミュリエルの寝顔を見てフッと微笑むと、ヴェルヌも静かに目を閉じた。
――窓の外には、満天の星空が広がっていた…