現実ＲＰＧ

もう一つの現実

２００９年、４月２５日。


「くそっ……」


パチンコ屋から出てきた拓馬は、財布の中身を確認しつつそう呟いた。


「４万も負けたよ……」


トボトボと小汚いワゴンＲに向かった拓馬は、ドアを開けるとエンジンをかけ、車を走らせた。


向かう先は、道なりに進んで５分程にある牛丼屋。牛丼屋に着いた拓馬は、中に入ると入り口から一番近いカウンターの席についた。


「牛丼、並盛り！」


藤原拓馬、２２歳。今年で大学４回生になるが、ろくに大学にも行かず、面倒で就職活動も途中で諦め、ギャンブルに没頭していた。


ルックスはどちらかと言えば良い方だが、どこにでもいるような顔立ちをしていて、髪は少し長めの黒。痩せ型で、少し髭が濃い。


「あぁー、そろそろバイトでもしなきゃ、金がねぇな……」


そう呟き、入り口付近にある無料の求人広告を手に取り、パラパラとめくりだした。


「牛丼並み、お待ち！」


その店員の声に、箸を割って牛丼を頬張る拓馬。そのとき、携帯電話が鳴った。