千里ヶ崎の魔女と配信される化け物





千里ヶ崎ミシェルさん所有の、「千里ヶ崎屋敷」への道のりの話だ。

彼女の屋敷は、街の高台にある。緩やかな山をぐるぐる迂回しながら登った、頂上だ。

特別な足のない僕は、屋敷までは歩いていかなければならない。

坂道だけで、徒歩四十五分……ほぼ毎日千里ヶ崎さんの家を訪れているから、これはかなりの運動だ。

もっとも、インドア派な僕にはちょうどいいのかもしれない。

大きな弧を描き続ける坂道は、ところどころに街灯が立っているばかりだ。

道が暗いから、丸く真っ白い光が、間の空きすぎた飛び石のように点在している。

その白い円の中に、なにかがあった。

……ひと。――そう人が転がっている。

スカートとジャケット、茶色い髪の女性が、仰向けに。

そばにハンドバッグが転がっている。

何事だろうと近づいたものの、顔は、見られない。

なぜなら、顔面へ噛みつくようにして、黒革の手帳が被さっていたから……。

それが、千里ヶ崎さんの屋敷へ行く前に見た、奇怪だった。





< 15 / 34 >

この作品をシェア

pagetop