ペアリングを外して
#3




 俺はすっかり忘れてしまっていた。

 待ち合わせが、こんなにも気恥ずかしいものだったとは……。



 夜七時半、待ち合わせは新宿駅東口交番前。

 一足早く到着した俺は、行き交う人々をただぼーっと眺めていた。

 彼女が現れたら、まずどんな顔をすればいいだろうか。

 笑えばいい?

 無表情がいい?

「待った?」

「ううん、今来たとこ」

 なんてベタなやりとりをするのだろうか。

 何度もイメトレをやってみる。

 それにしても新宿は人が多い。

 こんな中で三村が俺を見つけてくれるか心配になった。

 更には来なかったりして……なんて思ったり。

 それでもイメトレを続けていると、ポケットの中の携帯が震えた。

 久美からのメールだった。

〈明日、そっち行っていい?〉

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