未来のない優しさ
大和君も華穂も。
私を通り過ぎて幸せになろうとしている。

葵ちゃんもあんなに素敵な人と人生を歩んでいく。

私が願ってはいけない幸せを手にしていく姿を見る度に、心のガードを厚くして、悲しみがこれ以上入りこまないように感情を消して。

…それでも、健吾の側で過ごす時間が、私を脆くしていく。

あと少し…。

来月にはこの部屋を出る。

新しい場所で新しい仕事に集中すれば、きっと強い自分に戻れるはず。

…そう思うのに、どうして。

どうして。

リビングのカーペットに座りこんでいる私は泣いてるんだろ。

傍らにほうり出された鞄から飛び出した物が更に涙を誘う。
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