未来のない優しさ
「…忘れちゃう…」

「…は?」

「昔の綺麗な体だった私を忘れちゃうよ…」

「…くっ」

健吾は、泣きながら呟く私をぎゅっと抱きしめた。
お互いの体を密着させて、深く熱いキスを落としながら、背中を上下に優しく撫でてくれると…。

更に涙が止まらなくて、健吾の肩が濡れていく。

この傷だらけの体を一番見せたくなかった人の胸に抱かれて涙流しながらも、一番帰りたかった温もりが傷痕から染み渡っていく。

強さと諦めを身につけたはずなのに、素肌で健吾の吐息を感じると…服と一緒にそれも剥ぎ取られた不安定さが私を包む。

そして、その不安定さの中で…再び健吾に抱かれた。

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