フタリの事情。
*「にぶちん」
「てっちゃんてっちゃん、カワイー!!」


その言い方だと、まるで『俺が』カワイイみたいじゃん……

なんて、心の中で突っ込んだ。



高いジャンプを次から次へと繰り出すイルカに、まん前の席で釘付けのりぃ。


あーあ……

目なんか、キラキラしちゃって。


そんな視線を受けてるイルカに、ちょっとジェラシー。



『つーかさ、お前が一番かわいいよ』


イルカショーにはしゃぐりぃを横目に思った。

思っただけで、もちろん言えるワケないけど!



それよりも。

俺がさっきから気になってるのは、パシャパシャ飛んでくる水しぶき。


一番前の席ってことで、あらかじめこうなることは分かってたけど、頻繁に小雨みたいな水が降りかかってくる。


これじゃ、ショー終わる頃にはりぃが濡れちまうよな。

せっかく、ふわふわしたワンピース着て、カワイイ格好してんのに。


カゼとかもひいてほしくないし……



「りぃ、これ着てな?」



黒のパーカーを脱いでをりぃに手渡すと、りぃが俺を――その大きな目で凝視した。

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