秘密の誘惑

思い込み

顔の前に真っ白なハンカチが差し出された。


「だ、大丈夫です 持っていますから」


――お化粧が付いちゃう。


ポケットに手をやろうとしたが、ディーンは萌の手に握らせた。


「いいから 使って 捨ててくれてもかまわない」


萌はぎょっとした。


このハンカチは一枚3000円はするブランド物だった。


萌は涙を見られたくなくてハンカチを使った。


長いまつげを持つ萌は仕事中、マスカラはつけない。


涙を拭う萌はマスカラをつけていなくて良かったと思った。






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