恋の唄


自宅のリビング。
夕飯の支度を行う母の声が、学校から帰宅し、テレビを見ていた私の耳に届く。


「結衣~、悪いんだけどお醤油買ってきて」

「はぁーい」


特に見たいテレビも無かった私は、母からの頼みを素直に受け入れた。

というより、家にいても何をしてても最近は華原君とその彼女の事ばかり考えてしまっていたからジッとしているのが辛かったり。

だからこうして何かを目的として動いている方が気持ちが楽になった。

母から預かったお金を自分のお財布に入れ、小さな鞄にしまうと私は少しでも明るく振舞おうと元気な声で「いってきます」と告げ、目的地となるスーパーへ向かう。


今日の夕焼けは綺麗なオレンジ。

もう少しすれば紺と重なって綺麗なグラデーションを見せてくれる。

私はそれを見る為に、ゆっくりと住宅街を歩いていた。


前方から数人の小学生がランドセルを背負ったまま走ってくる。

楽しそうに笑って、元気な声で会話しながら。



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