さよならさえも言えなくて

誰よりも近い存在

「じゃあ、今日は歓迎会やるから絶対部活に来てね!」


満面の笑みでそう言うと、彼女は綺麗に巻かれた髪をフワリと靡かせて階段を上って行った。


「本当に入ったんだ……自然……何とか研究部」


「自然科学研究部ね」


隣に居た美羽の言葉に、あたしはそう訂正を入れる。
美羽に自然科学研究部に入部したと言った時、相当驚いていた。あたし自身、未だに信じられない。1日前のあたしには想像もしていなかった事だろう。


「田中もいるんでしょ?いつの間にそんなに仲良くなってたの?」


「……昨日まで会話すらした事なかったよ」


そう、昨日までは顔と名前しか知らない何の関わりもないただのクラスメートだったのだ。それが1日たった今、ただのクラスメートではなくなってしまった。まぁ自分で決めた事なのだが。


「でも他にも男いるんでしょ?平気なの?」

「あぁ、皆彼女居るから平気だよ」


美羽の質問にあたしはサラリと返す。
< 35 / 36 >

この作品をシェア

pagetop