君の瞳に映る色
2.ヴァンパイアの弱点
昨日はなんだか眠れなかった。
フランス語の勉強もあまり
手につかずテキストをぼんやり
眺めていた。

それでも眠くならずに仕方なく
布団に入ったがずっと寝返り
ばかりで熟睡した記憶がない。

おかげで頭が重くて頭痛もする。
棗は自分の教室へは行かずに
保健室へ直行した。

始業前の廊下は他の生徒も
多く色も溢れている。
気分が悪くなりそうなのを
足早に歩いた。

「西園寺さん」

後ろから呼び止められて
仕方なく棗は足を止める。
廊下には小柄な女生徒が
立っていた。

長めの前髪にふち無しのメガネ。
ボブの髪はゆるく
内側にカーブしている。

「…どなた?」

「沼淵瑠璃(ヌマブチルリ)です」

名乗られても棗はどこの
クラスの子かわからなかった。
そもそもクラスメイトの顔すら
覚えてないのだ。

「わたしあなたに言われて
少し目が覚めたんです」

俯きがちに瑠璃は続ける。

「まだすぐに変われるわけじゃ
ないんですけど、でも、その、
頑張ってみようって…」

おどおどしたそのしゃべり方に
棗は記憶が蘇る。






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