[短編]「I can't」
‐記憶‐



彰人の母と約束した日から、
樹音は時間の許す限り彼に会いに行った。


放課後

休日


少しの間でも彰人の顔を見たかった。



そんな樹音を、最初は怪訝そうに見ていた彰人。


しかし、不思議と樹音を拒むことはしなかった。


一緒にココアを飲んで、
一緒にケーキを食べて、
一緒にゲームをして、


ゆっくり、ゆっくり、
彰人は樹音に対して心を開き始めた。


記憶は依然として戻らないが、彰人には笑顔が増えた。


ほぼ毎日やって来る樹音を待つことが、彰人の楽しみになっていた。

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