君へ

「なお、立てる?」
夢みたい。
永久くんとまた会話出来ている。
しばらくしてゆっくり永久くんの体が離れると顔を覗き込んで永久くんが聞いてくれる。
つい、俯いてしまう悪いくせ。
「ご飯食べられる?朝ご飯出来てるんだ」
俺が作ったんだよ、と付け加えられる。
永久くん器用だったから上手そうだもんね。
ふっと思わず笑みが漏れる。
「あ、なお笑った」
目敏く永久くんが気付く。
「なおもっと笑ってよ。なお可愛いのに勿体ないよ」
可愛いというお世辞に馬鹿みたいに反応してしまってまた赤くなるのが分かる。
永久くんは私に同情して優しくしてくれているのを勘違いしてはいけない。
「なお、こっちだよ」
手を引かれベッドを下りる。
広いフローリングの床に下りる。
こっちだよ、手を引かれる。
「ここ、あのお家?」
ドアを出て廊下に出ると見覚えのある作り。
「そうだよ、すぐ分かったね」
「うん、覚えてる」
階段の手摺りに触れながら下りる。
以前触れた時より手摺りの位置が丁度良い。
成長して、時が経ったのだなぁと分かる。
「じゃあ温め直してくるから、顔洗ってくる?」
場所分かる?
と聞かれ頷く。
かくれんぼもしたし、この広い家はよく探検したから分かる。
寝起きの顔を見られたのかと今更ながら赤面しながら洗面所に行き顔を洗う。
タオルのしまう場所も変わっていなくてくすりと笑ってしまう。
昔に戻ったみたいで嬉しい。
気分が明るくなりよく自分の顔を鏡で見ると口元が赤くなっている。
急激に温度が下がる。
昨日の夕方の事を永久くんに会えた喜びで忘れていた。
同じように忘れていた足がじくじくと痛みを訴えている。
どんどん鏡の中の自分が色を失くしていくのが分かる。
込み上げる吐き気が止まらない。
気持ち悪い気持ち悪い。
「えっ…」
苦しい。
昨日から何も食べていない体は胃液しか出さない。

息が、出来ない。

苦しい。
苦しいよ。

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