君へ

目の前の永久くんがにこにこと見詰めてくる。
恥ずかしい。
「と、永久くんはご飯はいいの?」
自分ばかり食べているのもそうだけど、いつもなら気にしないし、普段無い筈の周囲の視線が更に恥ずかしさを増す。
「あ、俺作りながらつまんだし。でもこれなお食べきれないかぁ」
流石に私の普段の三食分くらいの量にこくり、と頷く。
「なお美味しい?」
こくりこくりと頷く。
とても美味しい。
こんな沢山作ってもらえて幸せ。
「うん、いいね。味濃くない?」
スプーンでリゾットを掬いながら聞いてくれる。
丁度良い。
味が濃いと今日の胃の調子だとまだ食べれなかった。
またこくりと頷きで返す。
「なお今日は何時で終わるの?」
体調まだ万全じゃないのだから早く帰ろうと言われる。
なんだか心配されているみたいでこそばゆい。
また、頷いて返事する。
「3時半に終わると思う」
小さく返事する。
「じゃあ40分に校門に迎え行くね」
え。
そんな。
迎えに来てもらうなんて、思わずぶんぶんと首を横に振る。
「スーパーに買い物行きたいからその後一緒行こ」
そう言われると。
「俺ひとりだと迷うかも」
この辺りはあまり小学生の頃から変わっていない気がするんだけど、迷うのかな。
でも一緒に帰れるのは嬉しい。
「い、いい、かな」
「うん「永久ぁ~!!」」
永久くんの声に被さるように北河くんの声が被る。
「永久お前俺がめんどクセ-事務やってる間にナニひ~め~とぉっ!!」
いつの間にか教室の中にいて大股に近づいてすぐ永久くんの背後に立つ。
「んだよ春心セマッ」
「姫んとこに弁当届けたらすぐ来るって約束しだろぉがぁっ」
頭上にのしかかりほうれん草のソテーをつまみ食いする北河くんとそれに抗議する永久くん。
「永久もう昼休み終わるし帰るぞぉ。姫騒がしくしてごめんねぇ、午後頑張ってねぇ」
派手なふたりなので一挙一投足注目されながら(ほぼ女子)食事を終え、北河くんが永久くんを引きずりながら教室を出て行く。
「なお、じゃあまた後でね」
こくりとまた頷いて返事する。
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