君へ

12

なおを待っていたら学校のチャイムが鳴る前に俺の前に人が集まる。
まだ授業中なんじゃないの?
面倒なので口には出さないけど。
早くなお来ないかなぁ。
適当に質問をはぐらかしながら考える。
この中にはなおのクラスメートも居るかもしれないから無下には出来ない。
そういう矛先が向かう場所は予想つくから。
適当に相手して釘だけは刺しておく。
「相良…さんは白井くんのなんなの?」
面倒なのでここでは母親の旧姓を使う。
てかお前今なおの事呼び捨てにしようとしただろ。
一気に不機嫌な顔を作る。
慌てたようにさん付けしやがって。
「俺の大切な子」
だから手を出すなと暗に含める。
え~と非難が上がったけど無視。
え、何様のつもりですか?
なおより優れてるとか馬鹿な勘違いしてるとか?
ふと顔を校舎に向けると少し離れて佇むなお。
ごめんね。
こんなに人がいたら近寄れないよね。
「なお、来てたんだ」
掻き分けて数歩で近寄る。
なおは驚いたみたいで、「あ…」とか「話し…」とさっきの周りの子達を気にする。
気にしなくていいのに。
「ああ。うん、なお待つ間だけだから、もういい」
そう言ってなおの柔らかい手をとる。
周りの子達に軽く挨拶して帰る。
帰り道なんて覚えてる。
さく。さく。
なおの歩く音に合わせて歩く。
丁度良い歩調。
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