君へ

14

「お、う~まぁそ~」
春の声。
仕事が終わって帰って来たのだろう。
煩い。
「姫が作ったの?」
キッチンに立つなおに気安く話し掛けるな。
「あ…えと…」
「俺とふたりで作ったんだよね」
助け舟を出す。
こくりと頷く。
「トマト味だぁ美味いよねこれ」
春の言葉にもこくりと素直に頷くなお。
「手洗ってこいよ」
なおがいるのだから。
はいはいと洗面所に向かう春。
なおは黙々とサラダのレタスをちぎりカニカマボコをトッピングしていく。
ハムと胡瓜も切る。
なおが自分で作った醤油と酢と色々入れたドレッシングをかける。
「美味しそう」
素直な感想を口にするとまた小さく笑ってくれた。
「と、永久くん程じゃないけど」
春が戻ってきてご飯をよそう。
俺はロールキャベツの器を持ってテーブルに行く、その後サラダを持ったなおが続いた。
テーブルには玉葱入りコンソメスープがもう三つ用意してある。
「姫が来てくれてから永久が料理にやる気を出してくれて助かるねぇ」
春が旨そうにロールキャベツを頬張る。
なおはよく理解出来なかったようで小首を傾げるだけだ。
「姫が来るまで俺等ずっとコンビニ食だったんだぜぇ俺料理出来ないしさぁ」
無視に限る。
「なお美味しい?」
こくりと返事が返る。
なおは良く噛んで食べるクセがあるから食事は人より少し遅い。
本人は気にしているのか食事中は余り喋らず必死に口を動かす。
それがリスとかウサギっぽくてとても可愛いのだが、余り急いでも体によくないし楽しくない。
好きなペースでのんびり食べればいい。
なので話し掛けてみる。
「なお明日はご飯何がいい」
「俺はやっぱ肉かなぁ焼き肉とかぁ?」
「お前に聞いてないし」
なおってつけただろうが。
「いやいやまじ姫の事考えてるしぃねぇ?」
「ねぇじゃねぇよ、馴れ馴れしい」
「焼き肉パーチーとかいいじゃん♪」
俺の質問に春が噛み合わない返事を返す。
俺はなおに話し掛けてるのに。
でもなおは軽いテンポの話しが珍しいのか表情が明るくなっている。
食べるのも忘れて俺達見てる。
< 32 / 48 >

この作品をシェア

pagetop