君へ

17

ぽちゃ。
温かい湯舟に爪先を入れる。
足先からじんじんと痺れが伝わる。
自覚無しだったけど冷えていたようだ。
永久くんから入った方がいいという言葉は通らなくて、結局先にお風呂を借りてしまった。
はぁ。
もっとスマートに対応したいのに出来ない。
手の平を見るとクマ。
永久くんに渡されたミドリ色のクマを湯の中にぽとんと落とす。
湯に触れた所からしゅわしゅわと泡立ちながら下へ下へとクマが小さくなりながら逆さに落ちていく。
広いお風呂なので泡の隙間からちらちらと澄んだ綺麗なミドリ色の湯が見える。
私にはなんだか勿体なさすぎて小さく体育座りになって顎まで浸かった。
グリーンアップルの爽やかな香りが疲れを取ってくれる。
もう5分くらい浸かったから温まっただろうか。
置いてある良い香りのシャンプー類を借りて洗うとシャワーを浴びて浴室から上がる。
棚からふわふわのバスタオルを取り、水気を取るとさっとパジャマに着替える。
ざっと髪をタオルドライして永久くんの元に向かう。
余り待たせても申し訳ない。
「と、永久くん、上がりました…」
リビングに着くとソファーに寛ぎながらTVを見ている永久くんを見つける。
「あ。なお、早かったんだね」
永久くんは少し驚いたように振り返る。
「なおまだ髪濡れてる」
こっちおいで。
誘われるまま永久くんの元にいき、クッションの上に座る。
「今ドライヤー持ってくるから待ってて」
「あ、自分で乾かせ…永久くんお風呂…」
私の言葉は永久くんの笑顔で封じられる。
「アイス食べる?」
スーパーでさっき買ったアイスの事だ。
こんなに甘えていいのかな。
「食べれなかったら俺が食べるから一口食べる?」
そう言われると食べてみたい、かな。
いつもみたいに頷く。


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