君へ

27

キスしている時、恥ずかしくて、意識が朦朧とする中で、それでも確かに私の中にあったのは、喜びだった。
突然のキスは永久くんにどういう意図があるのか分からなかったけれど。
どんな理由であれ、彼に触れられるのは幸せで、喜びだった。
だからそれだけで良かった。
決して、永久くんの心を望んだ訳では無かった。
一時の気まぐれ。
それか同情か。
どちらもか、分かっていたのに。
それなのに。
「なお、ごめんね」
謝られた。
どうして。
私は私の理由で嬉しかったのに。
永久くんにとっては謝罪するような事だったの?
涙が、溢れそうになる。
慌てて俯く。
泣いてはいけない。
永久くんをこれ以上困らせちゃいけない。
涙を堪える。
半分本当で半分以上違う尤もらしい言い訳をする。
永久くんは納得してくれたみたい。
その後、発せられた言葉にまた頭が真っ白になる。
恥ずかしい。

でも、私は卑しい人間だから。
永久くんに触れたいと想う気持ちを抑えられない。
永久くんに触れてはいけないのに。
永久くんの気持ちも、このキスにどんな意味があるのかも、分からないのに。
それでも、
「また、しても良い?」

彼に触れられるなら、構わないと。
愚かな過ち。
駄目だ駄目だ駄目だ。
分かっていたのに。
甘い誘惑に、こくりと頷いてしまった。

罰がきっと待っている。
どこか涙を堪えて痺れた頭の奥で警告が囁かれたけど、それでもいいと、無視した。
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