君へ

私は家に帰って、あの人からまた殴られた。
あの人は酔っ払っていて私はよく分からなくてずっと耳を塞いで堪えていた。
でもその日はいつもより激しく長くて。私は怖くて逃げ場所を求めて手短かにあった窓に手を掛けて恐ろしさに押されるように冷たい外気が肌をさす外に落ちてしまった。

2階から落ちて、痛いと思ったすぐ後には意識を手放していた。


気が付いたら病院の一室にいて、彼との約束から二日たった後だった。
私は泣き叫んで病室を出ようとしたけど取り押さえられてその度に注射をうたれて、気が付いたら一週間経っていた。
私の興奮状態はそのあとも長く続いた。
それも合間って私の情緒不安定での事故で落ち着いたらしい。
何人もの人間が私に話し掛けたけど私は彼に会えなかったショックで何も喋れなかったし、何をしていたのかその頃の一ヶ月程の記憶が今だに欠けている。


そして、私はまた家に戻りあの人と生活してる。


そして普段の生活には差し障りないけど季節の変わり目に痛んだり激しい運動を制限される左足を持つことになった。



彼と別れたのは丁度こんな季節だった。だからこんなにも彼を思い出すのだろう。


私は開いてあまり進まなかったノートと教科書を閉じる。
つっと席を立つともう場所を覚えてしまった書籍の前に立つ。
彼が好きだといってたまに読んでくれていた本だ。

適当に開いてそこから文章に目を添わせる。
もう何十回、何百回と見た本なのでどこからでも分かる。
むしろ好きな一説はソラで暗唱できるくらいだ。

「すごいね相良さん」
本に影がさす。
反射的に半歩下がる。
「驚かせちゃったかな?ごめんね」
悪びれる風もなく口だけ謝っているのはこの中学校の生徒会長だ。
「相良さん流石だね。それ洋書でしょ?」
生徒会長が指さすのは私の持っている本。
そう彼はあの年で洋書を理解し更に好きだと言ったのだ。
彼のお母さんの影響だといっていたけど今の私の知識でやっと読めるのだから本当に彼はすごい。
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