君へ

「本当にその本好きなんだね」
思わず彼のことを考えていたせいか自然と表情が柔らかくなっていた。

「!!」

口許に手をあて、眉をしかめる。
しっかりしなくては。
隙をみせたらダメ。
命取りになることは生まれて15年の間によく刷り込まれている。

「………」
私は無言で本を仕舞うと生徒会長の横を通り席に戻った。素早く荷物をまとめて外に目をやる。大分暗くなったがまだ6時前だろう。
早いけれど仕方ない、帰ろう。
「帰るの?じゃあ送っていくよ」
生徒会長も喜久とついて来る。

私は彼に会うまで知識とは無関係な所で生活していた。
けれど彼が私に自分を守る盾になるからと教えてくれた。

地道に教えて貰った通り勉強していたら六年生の時にはクラスの真ん中より上の順位にまで上がり、中学校に入ってからは家に帰りたくないと更に図書室で勉強していつの間にか学年の首位をたまにとれるくらいの成績になっていた。
そんな私に教師が勝手に私を生徒会の書記に推薦し、他に立候補もいなかったので当選してしまった。
小学生の頃から無口は変わらない。
中学生になったら余計喋らなくてもよくなって書記の仕事はしてもほとんど生徒会のメンバーとは話ししていない。
この生徒会長だけが煩わしく話し掛けてくるので顔だけ認識している。


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