危険ナ香リ

手を出さナイで






 ……い、今、なんて言ってた。




 固まるあたしに合わせるかのように、赤信号で車が止まった。


 佐久間先生の口元は楽しそうに歪んでる。




「手足縛って、柱にくくりつけておこうか。それなら逃げられないし、誰とも会うことはない」




 この人怖い!!


 け、警察呼ぶ準備しなくっちゃ!


 自分の身は自分で守らなくっちゃ!




「なに携帯出してんだよ」

「じ、自己防衛のためです」

「ふぅん。それにしては、少し甘い気がするけどな」




 くいっ、と顎を掴まれて上を向かされる。


 内心、ドキドキしちゃっているのは、こんなことされるのは初めてだったから。


 顔を赤くしたあたしに気づいた佐久間先生は、艶っぽく笑った。


 サラサラとした、茶色の髪が開けた窓から流れる風で揺れる。


 佐久間先生の後ろに見える、街灯の明かりが、今は佐久間先生を引き立てる役目を果たしている。




 ……って、だめだめ!!


 佐久間先生なんかにドキドキしちゃだめ!




「ここ、青信号になるまで時間がかかるんだ。……さてどうしてくれよう」




 長いまつげが伏せられて、目を細める姿が見られた。

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