王国ファンタジア【宝玉の民】

微かな信頼と最後の酒宴




なんとか仕事を間に合わせたドルメック。


今は、夜の街並みを感慨深げに眺めながら、約束の酒場へと歩を進めている。


ここは、ドルメックの人生を運命付けたあの日以来、最も長く居着いた街だ…。
気の良い住民が多く、居心地の良い街だった。


場合によってはもう二度と訪れることが出来ないかも知れない。



陰鬱な気分になってきた。
かぶりを振って大きく息を吸い込んだ。
冷たい空気が肺を満たし、思考に掛かる靄を払う。



中央の大きな道を逸れ、夜でも明かりの絶えない歓楽街の方へ向かった。

娼館の客引きや酔っ払い、ヤクザ者などが行き交う道を迷い無く進む。


突き当たりの奥から三軒目。
鷹がトレードマークの《飛翔亭》
目当ての酒場に到着した。


両開きの扉を開けて中に入る。

店内は仕事の疲れを癒す為に訪れている客で一杯だ。
ドルメックは店内を見渡し、お目当ての人物を発見した。



「すまん、待たせたな」




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