愛の楔



クスクスと奴は笑う。


「芝居、だと」

「そう、芝居」


笑う奴を睨みながら、その隣に居る美空を見る。
そして、俺は、確かに見た。
何も映し出されていない瞳の奥にちらつく炎に。






なぁ、美空。
あの時、俺はどうすれば良かったのだろう。
どうすれば、お前は壊れなかったのか、今、考えても分からない。


止めればよかったのか?
でも止めていたらお前はもっと壊れていたかもしれない。


俺は、お前に言ってないことがある。


美空………俺は、知っていたんだ。


だけど知ってもなお俺は、お前を切り捨てることは出来なかったんだ。


お前を………愛しているから。


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