アリスとウサギ

8.ウサギと家族




 どうしてこんなところにいるのだろう。

 そう思った時、アリスはウサギの住むマンションのロビーにいた。

 オートロック機能付きインターホンパネルを目の前にただ立ち尽くしていると、後からおばさんがやってきたので順番を譲る。

 再びパネルの前に立つが、ウサギの部屋の番号をなかなか押すことができない。

 日曜の昼。

 ウサギが高い確率で自宅にいる時間帯。

 女がいても、マフラーを返すくらいなら良いと判断した自分が間違っていた。

 郵便受けに入れようとも思ったが、入らない。

 管理人に預けようとも思ったが、不在。

 もうこのインターホンを鳴らす以外手はない。

 勇気を出して人差し指を出す。

 1108 呼出し

 ピーンポーンと柔らかい音がすると同時に、鼓動が激しく鳴り出した。

 ひきつったアリスの顔は、きっとウサギの部屋のパネルに映し出されている――……。

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