なんでも屋 神…第一幕
涙を流しながら全てを語ってくれた神君に、掛ける言葉が見つからなかった。



何も考えず、神君を抱きしめてしまう私の目からも、止め処なく涙が溢れる。



「…でもな、帰ってきたら家が建て変わってただろ?少し過ごし易くはなったよ…その時だけはお袋に感謝したな。でも、この真美の部屋は昔のまんまだ。最初は心が痛んだけど…今は偶にこの部屋に来て癒されてるよ。それは毎日掃除してくれてるイトさんに感謝だな。」



無理矢理に笑顔を作る神君を、力の限り抱きしめる。



でも…私の涙の方が多すぎて、その内逆に抱きしめられてしまった。



「だから最初は、一葉を俺の側に置きたくなかったんだよ。」



あんな話しをした後でも優しい神君…貴男のその優しい心も、貴男のその私を抱きしめる手も、汚れてなんかいないよ…。



「今の私に、神君の昔の話しを全部理解する事は出来ない…。でも、神君を嫌いにもなってない。だって、今私が見ている神君が本当の姿でしょ?私が見てる神君は、偶に意地悪だけど私に優しくて、何時もは仏頂面だけど笑うと可愛くて格好いい神君だもん。」
< 178 / 309 >

この作品をシェア

pagetop