なんでも屋 神…第一幕
第十一章
暖房など無い。この場に居る兄ぃの子飼いは十人。恐らく、あと何人か潜んでいるだろう。



降り始めた雨音が、厚いトタン屋根に当たっては消えていく。



普段とは違うスーツ姿のノリは、俺の後ろで懐に飲んだグロッグを握っている。最大弾数は十二発。俺のベレッタと同じ。



俺の左脇には小龍と、その隣には先程紹介された、この間見たボディーガードの陳。二人共濃紺のシンプルなシングルスーツ。冷淡な陳の右手には、湾曲な刃を施した青竜刀が握られている。



俺の右脇には身ぐるみ破がされた、樽型体型の親父が一人。両手両足を椅子に縛り付けられ、寒さで奥歯をガタガタと鳴らしながら、哀願するような三白眼を投げかけてくる。



それを挟むようにして、何時もの黒いスーツを着こなしている、兄ぃと子飼い連中。



久しぶりに訪れたこの食肉工場は、既に閉鎖されていたが、俺達の後ろには花田に別れを告げた、肉の塊をミンチにする機械だけが残されていて、秋の季節だけで無く寂しさが漂う。



「う〜。ん〜!」



隣で猿轡をされながら喚く親父に拳を振り下ろす。その挙動に脅えているが、こう見えても歴とした[三谷組]の組長。仙海晴雄である。
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