なんでも屋 神…第一幕
イトさんの話しを聞くと、お袋が倒れたのは事実らしいが、医者に言わせれば酒の過剰摂取と体調不良が重なっただけの事らしい…人騒がせな。



それでも風邪一つ引いた事が無いお袋が倒れたのだ、イトさんが心配するのも分からなくは無い。


イトさんは俺が生まれる前から、ウチの家政婦をしている。実家は東北の方にあるらしい…らしいと言うのは、一回も実家に帰った事が無いからだ。



家事が全く出来ないお袋の代わりに、住み込みで家事をこなしている為、俺にとっては家族同然どころか、イトさんの手料理が俺にとって母親の味なのだ。



確か今年で六十三歳になる筈だが、しばらく見ない間に白髪が目立つようになった。



相変わらず母親は、俺とイトさんが真面目に話しているのにも関わらず、テレビに釘付けになっている。



「おいババア、何でもないなら俺は向こうに帰るからな。」



俺はそう言って、飲み掛けの紅茶を残して立ち上がった。
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