あれから今日で一ヶ月…この店を開いてからは二週間経っていたが、依頼は未だ無い。



当然と言えば当然。駅裏の雑居ビルが無数に建ち並ぶ中の、一際ボロい八階建てのビルの七階にひっそりとオープンしたのだ。勿論広告や宣伝等は一切無い。



あの日、俺が飲み掛けの紅茶を残して立ち上がった瞬間、母親が手の平を上に向けて差し出してきた。



「アンタ、馬鹿息子のくせにそんなに冷たい事言うなら、家を出て行く時に私の金庫から持って行った三百万を今すぐ返しなよ。」




…泣きたくなった。



当時、高校を何とか最低ラインで卒業してからの俺は、半年間バイトもせず定職にも着かないでブラブラと、それこそ飛ぶように遊び回っていた。


だが半年もそんな事をしていると、次第にそんな生活にも自分自身にも嫌気がさしてくる。そんな時に、偶々テレビで見たマイアミに強く惹かれ、無断でお袋の金庫から三百万を持ち出して日本を後にしたんだ。



「マジですかお母さん。今直ぐなんて私お金無いですよ!」



そんな俺の切実な訴えにも、母親の答えはとてもシンプルだった。





「じゃ働け!」

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