禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~
■動き出した針■
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家に帰ると、神楽が珍しく早く帰ってた。



「おかえり。」



この人の笑った顔なんか見たことない。



いつも無表情だし。



「ただいま。」



あたしまで表情をなくしてしまう。



そのまま部屋に直行。



鞄を置くと、鏡の前でため息をついた。



あたしって、何のためにここにいるの?



鏡の中の自分にしか聞けない。



コンコン…



「奏凛さま、お風呂は?」

「1人で入りたいって伝えて。」



初めてだ。



こんなこと言ったの。

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