俺は東磨を見つめた。



東磨は強い目で、俺を見返している。




「…東磨、お前、知ってたのか」




俺が掠れた声を出すと、



東磨は短く、



偶然だけど、と、返事を返す。




「杏寿ちゃんとは接待やら何やらで、


同席してもらう事が多くてね。



…つい色んな話をしてるうちに、


杏寿ちゃんが自分の境遇を、


少しだけ話してくれた事がある。



…俺は、初めて杏寿ちゃんに逢った時から、


誰かに似てるってずっと思ってた。



…やっと思い出した。



お前のその氷みたいな瞳が、


杏寿ちゃんの瞳と良く似てるんだ。



…だからこの間来た時、聞いて見たんだ。


『高宮圭斗を知ってるか?』って」



「…特ダネ元、


探し出したってとこか」




俺は、軽く見ていた東磨が、



こんな所で俺の過去を知った事に、



唇を噛んだ。





「…俺を知ってる。


…その人生投げ出したような、冷たい目。


俺と同じ孤独。



お前、志帆だな。



…あの孤児院で、


たった1ヵ月の間、一緒に育った」





俺の言葉に、



杏寿、いや、志帆は、




やっぱり唇の端にだけ笑みを残して、



ワインを傾ける。




「…何でお前、こんなとこで仕事してる?



…お前はあの孤児院から出て、


両親の元に戻ったか、


里親に貰われて行ったか、


そう思ってたけど」



「その通りだよ」




志帆はいきなり、



ホステスと客とは思えない位、



くだけた調子で言葉を返して来た。





「…圭斗。悪いけど、ここでは杏寿って呼んで。


…それが私のここでの名前だから。



…よく来てくれる高木さんだって、


私の本名は知らせてなかったんだし」




「…俺の事は簡単に東磨に漏らしておいて。


…良く言うぜ」





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