ラブリーホーム*先生の青③




朝、目が覚めて
布団がもぬけの殻で



寝ぼけてたせいだろう



とっさに思ったのが
イチが青波を連れて
出て行ったんじゃないか



慌てて部屋を出て
リビングに入ると



青波は鍋で遊び
イチはキッチンで
朝飯を作ってた



ホッとしたオレの足に
「ぱっぱぁ」と
青波が抱きつき
笑顔で見上げる



……そうだよ
イチがどこに行くって言うんだ



イチの家はここだ
ここだけだ



足に絡み付く
青波を抱き上げた時



イチがキッチンから
こちらに顔を出し



「パパおはよう
まだ8時だよ
日曜なのに早いね」



ニッコリ笑って
機嫌よく言ってくれたのに
はっきり分かった



イチはまだ怒ってる



腫れたまぶたと
出来すぎの笑顔



「ごめんね
まだ新聞取ってきてないや」



「いいよ、それくらい」



抱っこした青波が
まだ眠たいのか
手を伸ばし
オレの耳を掴む



人の耳を掴む
眠たい時やる
青波の癖だ



「朝ごはん
もう少しで出来るから」



キッチンに戻る
イチの背中を見る



まだ怒ってる
だけど これ以上
オレに どうしろっていうんだ?





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