ラブリーホーム*先生の青③




私に声をかけられ
青波はますます調子を上げ
カシカシカシカシ
鍋の底とおたまを
ぶつかり合わせ
手を動かす



今のところ
何かが出来たーって
顔をする事はなく
エンドレスに
青波はおたまを動かす



「青波は将来
三ツ星レストランの
シェフかなー?


だーれかサンみたいに
いっさいお料理出来ない男には
ならないかもねー」



イヤミはちゃんと
聞こえるらしく


パパはジャ〇プから顔を上げ



「なんだよ、うるせーな
三ツ星レストランのシェフって
お前のメシ食って育って
そんな たいそうな味覚
育つのかよ」



むかっっ



「なによー、私のご飯に
なんか文句あんの?」



「いーえ、べっつにぃ」


「なによ、なによ
結婚前なんてさ
『イチごはん美味しい』なんて
有り難がったクセにー!」



「あ~、女はこれだから嫌だね
大昔の話引っ張り出しやがって
忘れたっちゅーねん


つーか、
毎日レトルトとカップ麺に
飽きてたから
お前のメシじゃなくても
美味しく感じただろーけど」



「むきーっっ!
なんなの?ねぇなんなの?
オニギリも握れないクセにー」



「あー、うるせー
風呂っ!風呂入る」



バサッ
ジャ〇プを床に放り投げ
パパは浴室へ行ってしまう



おたまを動かす青波に

「青波はあんな男に
ならないもんねー」
と心の中で言う



いくらムカついても
子供に父親の悪口は
言っちゃダメだよね



ムカついてるけど
殴りたいくらい
ムカついてるけど




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