大嫌いでも、大好きだから。

彼の誘惑



「話して」

鳳くんはそっと私の涙を掬うと、
優しく微笑んで言った。


静かな保健室。
カチカチという時計の音だけが聞こえる。


「……はい」

私は話し始めた。


「好きな人が、いるんですけど……」

「うん」

「その人に嫌われてて……」

言いながら、
また悲しくなってきて、
涙がぽろぽろと零れる。
< 35 / 50 >

この作品をシェア

pagetop