雪に埋もれた境界線
第一章 候補者
 屋敷の扉が開くと、目の前には、初老の男性が立っていた。

 彼は小柄で、タキシードのような服を身に着け、髪は白髪。その白髪の髪は、オールバックで綺麗に整えられており、目には鋭さがある。全体的に清潔感のある男という印象だ。

 彼の背後には真っ直ぐに伸びた幅広い廊下があり、玄関を入ってすぐ、左と右には大きな扉が見えた。


「どうぞ、こちらでございます」


 初老の男性は無表情で、意外にも甲高い声だった。

 そして左側の扉を一瞥し、陸に視線を戻すと扉を開けた。

 ここはどうやら応接間らしいが、広すぎる室内をぐるりと見渡した陸の目に入ったのは、高そうな大理石のテーブルと、棚に飾られた何だか奇妙な動物の像である。大きさは五十cmくらいだろう。それは屋敷の門から玄関の扉まで続く一本道の両側に建てられた、奇妙な動物のオブジェと同じ物に見えた。天井には高そうなシャンデリアが取り付けられており、テレビは見あたらないが、おそらくテレビの代わりなのだろう、奥の壁には巨大スクリーンが設置されている。そして窓は羽目殺しで、一般の窓枠より小さめの枠のように感じた。床には絨毯が敷き詰められており、何かの動物らしき本物の毛なのだろう。茶色くふさふさしていた。玄関でスリッパに履き替えたのだが、素足だったらどんなに気持ち良いだろうと思わせるほどだ。そして広い室内には、テーブルを囲むように置かれた大きめな皮のソファがいくつかあり、すでに何人もの人が座っていた。

 一人一人を見ると、年齢も性別も服装においてもバラバラだった。

 ははぁ、この人達も候補者で招待されたんだなぁ。

 陸がそう想像していると、若い派手な女と目が合い、ふいに話しかけられた。

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