ストーカークラブ
第八章 犯人の目星
 自宅前に着くと、俺達は目を疑った。
 玄関の横に下げて置いた黒い傘が、刃物で切り刻まれているのだ。

 警戒しながら玄関を開け、部屋中を調べたが、中に誰かが侵入した形跡はなかった。


「おいっ! よっ、陽一……これっ」


 信太は点滅を続ける自宅の電話機を指さした。


「何だよこれ! 留守電が満タンに録音されてる」


 陽一が再生ボタンを押すと、無機質な金属音のボイスチェンジャーが呪いをかけるかの様に、同じ言葉を繰り返していた。


 ――美奈子と別れろ――
 ――殺して欲しいのか?――
 ――裏切り者――


 その時、自宅の電話が着信の音を奏でた。
 ビクっとして固まる信太に、陽一は早口で言った。


「俺が無言で電話を取るから、その間、信太は順君か白石さんのどちらかに電話かけろ! 急げ!」


 そうか、陽一の考えは、嫌がらせの電話の犯人が、俺の自宅と話し中であれば、俺の携帯から犯人の電話にかけた場合、繋がらないはずだ。それに犯人が公衆電話からかけている場合、電話越しに携帯の着信音が聞こえるか、何かしらのリアクションがあるかもしれない。それが僅かな可能性でも、やってみる価値はある。






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