境界上
†“掘り出し物”には御用心。
.


――『じゃ、俺の行きつけの創作居酒屋にでも行きますか』


居酒屋なんていうから、てっきり賑やかな場所を想像していたけれど。


車で20分程走ったその場所は、どちらかといえば繁華街から少し外れた隠れ家的な立地で。

店内も、クラッシックな内装に映えるライトアップとBGMに洋楽が流れる、
“居酒屋”というよりは“バー”という趣の店だった。


「若い割に意外と渋好みなのね」


「ははっ、若いって1つしか変わらないのに?」


“のに?”

さりげなく砕けた口調の変化。

プライベートのオンオフをスマートに演出する彼は、やはり結構な“掘り出し物”なのだろう。


「それともこういう店は苦手?」


しかも、砕けた口調は当然そのままで。

彼はお得意の“爽やかな笑顔”でアタシをソファ席にエスコートする。


――全く、手慣れたモノね。

敢えてカウンターやボックス席をスルーして“カップルシート”に誘導なんて。

“白々しい”のに“清々しい”なんて笑えるわ。


「……なぁに?
骨を折って“予習”、してきてくれたんじゃないの?」




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