ラブ☆ヴォイス

押せないボタン

* * * 

誕生日が終わり、あっという間に7月になった。本格的な夏がやってくる。日差しも次第にきつくなってきた。そんな唯は今日も携帯とにらめっこ。

「まぁーだメールしてないの?」
「うわあ!華!」
「大体、アドレスはあんたがポストに入れた日にちゃんと手に入れたんでしょ?」
「そ…れはそうなんだけど…。」

 とてもとても意外なことに、あっくんは律儀にも唯がポストにアドレスを書いたメモを放り込んだ日にメールをくれた。とはいえ内容はたった一言というか一文字、俺』だけではあったが。

「なんで返信しなかったのよー?」
「だってなんて打てばいいか分かんなかったし…特に用事もないのに…お仕事してるあっくんを煩わせちゃダメだよなぁって思って。」
「…唯にしちゃ珍しい正論じゃない。」
「…止められなさそうで怖いんだ。」

 唯の口からポロリと本音が漏れた。

「止められない?」
「1回メールしちゃって、それで返事来たら嬉しくなっちゃって…終われそうにないって言うか…。」
「で、今一生懸命自制してる、と。」
「そゆことです。」

 突っ走ったら止まれない性格と自覚があるからこそ、押せない。真ん中の送信ボタン。
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