ラブ☆ヴォイス

会えない人→隣人

 いつも通りの道を歩いて家に戻る。ふと、同じフロアの角部屋を見やると、部屋の前に段ボールを畳んで紐でくくったものが数セット置いてある。

「…ん…?お隣さん…引っ越してきたのかな?」

 お隣さんが引っ越してしまって、部屋が空いていたのは知っている。だから新しい人が来たんだなととりあえずは納得する。なぜこんな時間にって感じだけど、明らかに引越しの業者さんも来てるし、ドアだってかなり大きく開けられたままだ。
 どんな人かと考えると、少しだけ好奇心がうずく。仲良くなれればいいなとも思う。挨拶もしたいけれど、今は忙しそうだし、ひとまず今日のところは荷物を置いて日を改めてかと呑気に考えていた。

―――あの『声』が聞こえるまでは。


「すみません。その段ボールはこっちにお願いします。」
「え…?」


 身体中に電気が走ったみたいな衝撃、(もちろん実際に感電したことはないけれども)とまでは言い過ぎかもしれないが、人生で一番強い衝撃が今、確実に走った。

 ドアにかけた手がそのまま凍りつく。…痺れて動けない。だってこの声は間違いない。この声の主は、たった一人だけ。

「あ、お隣さん?」
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