愛の雫
「希咲ちゃん……?」


ドアの向こうから陽子さんが呼び掛けて来たけど、返事をせずにベッドに体を預けた。


洗い立てのシーツの香りで、あたしがいない間に陽子さんが部屋に入った事に気付いて、益々苛立ちが募る。


「……希咲ちゃん?」


「煩いっ!!さっさとあっち行ってよっ!!」


あたしが声を荒げるとすぐに、陽子さんが部屋の前から離れたのがわかった。


胸の奥がチリチリと痛む。


口の中に微かに残っていたカラメルミルクの味が、心に虚しさを感じさせた。


< 33 / 830 >

この作品をシェア

pagetop