短編集<陰>
不敵な笑みで
彼氏が遠く離れた所に旅立ってから3ヶ月。


奴は待ってましたとばかりに連絡を寄越した。


「久しぶり、寂しくはない?」


下心丸見えのその文章に呆れながら、しかし奴の言うことが事実だったので、私は正直に返事をした。


「寂しいわ」






次の返事で、
私は彼を愛してると再確認しながらも、奴と会う約束をしてしまう。




奴は、私が今の彼とくっつく前から私の事を好きだった。


私はその想いに応えた日はない。

それでも奴は、"いつか"を信じて私を想っている。





「久しぶり、」

そう言って奴は、早速私を口説こうとする。

「ホント、懲りないわね」

奴は、いつも不敵な笑みを向ける。

いつも私に負けてる癖に。

「俺に、乗り換えなよ」

「・・・なんで?」


ほら、また不敵な笑みを零す。


「あのね、言っておくけど・・・もし今私がアンタに乗り換えられるなら、この先アンタ以外の男にも乗り換える可能性があるって事なのよ?」


そう、今ここで、寂しいという理由で彼から奴に乗り換えてしまったら、きっと今までストッパーになってた何かが壊れて、寂しくなる度に他の男に逃げるようになってしまう。


「大丈夫だよ」


不敵な笑みで、


「俺は隙間なく抱き締めるから」
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