お前じゃない
エピローグ
 〜遺書〜

 俺は何て事をしてしまったんだ。元はといえば、ハルこと相沢春一が悪いんだ。天然でドジのくせに、社長に一番気に入られていた。

 去年別荘に招待された夜、俺と社長が最後まで飲んでいて二人の時に、「新しい企画はハルに任せようと思ってるんだ。まぁ昇進って事だな」社長がそう言った時、俺は目の前が真っ暗になった。

 何でハルなんだ? 俺が今まで努力してきた事は何だったんだ? 本当なら、俺が昇進するはずだったじゃないか。それだけじゃない、俺が想いを寄せて居たあの人までがハルに好意を持ち、そのせいで俺は振られたんだ。

 みんなして、ハル、ハル、ハルと、目障りで仕方なかった。それから日に日に、ハルの存在が邪魔になった。こいつさえいなくなれば、こいつさえいなくなれば、俺はその事しか頭になかった。

 しかし、かつて殺そうと何度も試みたが、運良く切り抜け、ハルは死ななかった。

 会社の階段から突き落とそうとすれば、コンタクトが落ちたとかで急にしゃがむから、俺が代わりに落ちて足を骨折した事もあった。

 会社にあるハルのマイカップに毒を塗っておけば、その時に限って、ハルは手を滑らしカップを割るし……。

 しかもその割れた破片を俺が片付けるはめにもなった。

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