元彼の末路
プロローグ
 こんなはずじゃなかったのに……。

 凛花はそう何度も悔やみ嘆いていた。

 理由は男運の悪さ。人を見る目がないというのは、彼女にこそ相応しい言葉かもしれない。

 財布も持たず、家を飛び出した凛花は、冷たい風に痛みを覚えながら立ち尽くしている。

 この街外れの丘まで、何処をどうやって来たのかは思い出せない。それほどまでに夢中で、ただひたすら走ってきたのだろう。

 周りを見渡せば、まるでここには凛花しか存在しないような静寂があるだけ。丘から街を見下ろすと、灯りがぽつぽつ光っていた。その数少ない街の灯りが、凛花の心を余計暗くさせている。

 全ての光が敵に思える程、深く傷ついたせいだろう。

 きつく目を閉じると、今までの恋愛、いや、元彼達の顔がずらりと浮かぶ。似たような人を好きになってしまうものなのだろうか。外見ではなく、性格というか、本質というか、例えば暴力を振るう男性を好きになり、それが嫌で別れても、次に付き合う人は言葉の暴力を振るう人だったりと、どこかで似たような人を自ら選んできたのだろうか?

 私は自分の本心が知りたい。どうして今こんなふうに孤独で寂しいのか、何故漠然と不安なのか。思い出しては苦しくなる。まるで窮屈な場所に閉じ込められているような、酸素が足りず、もがいているような。そんな記憶が現在を脅かす。  

 一つ大きな溜息を吐くと、もう一度目を開き、再び閉じる。


 凛花の男運の悪さ、それは十年前、十六歳の時からだった……。
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