まほろば【古代編】
【アキの章・前編】(93P)
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物心ついた頃から、いやもっと前からなのかもしれない。

どこからともなく語りかけてくる声が昼夜問わず聞こえていた。

地の底から湧き出てくるような恐ろしげな声だったり、天高くから舞い降りてくるような涼やかな声だったり、その声はまちまちだったが、それがただ一つのものだということを疑うことなどなかった。

そして、その声は様々なことを教えてくれる。

この世の成り立ち、人間の業、通常では知り得ることなどできないはずの異国のことなどあらゆること、そうそれは森羅万象と言われるもの。

そして、決まって最後には同じ言葉を吐くのだった。

『このままではこの世界は崩壊する』

それがいったい何を意味するのかよくわからない。

疑問に思ってこちらから問いかけたとしても、その声は言いたいことだけ言うとどこへともなく消えさり、応えてくれることなど一度たりとてなかった。

だけど、毎日のようにそう聞かされていたせいなのか、それとも本能的に何らかの危機を感じているのか、このままじゃいけないという気持ちばかりが大きく育っていった……。
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