まほろば【古代編】
【ハルカの章】(92P)
<1>

その山を見たときから、何か得体の知れない感情が湧き上がってくるのを感じた。

嬉しいのか、怖いのか、懐かしいのか、悲しいのか……。

幾多の感情が混沌として、だけど、何かをしなくてはいけないと逸る気持ちだけが確かに感じられた。

こういった感覚は久しぶりな気がする。


私は子供の頃かなりのおばあちゃんっ子だった。

その祖母が、私が産まれた時にある予言をした。

「この子は、十五の歳に大きな岐路に立つ」と。

祖母は、幼い頃からそういった予言めいた発言を数多くしていたらしい。

しかも、その予言は驚くほどの的中率を誇った。

そのため、周囲の人間はそれを畏怖し祖母を崇めるか、逆に忌み嫌い敬遠するかのどちらかの反応を示した。

そして、予言の兆候は私にも現れ始めた。

いち早く気がついた祖母は、私に「よっぽどのことがない限りは口外してはいけない」というアドバイスをしてくれた。

そのおかげで、今まで私は表面的には平穏な生活を送っている。

その祖母も数年前に他界した。

そして今日、私は十五の誕生日を迎える。
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